大判例

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福岡高等裁判所 昭和30年(う)1985号・昭30年(う)1986号・昭30年(う)1983号・昭30年(う)1984号・昭30年(う)1982号・昭30年(う)1981号 判決

なるほど記録によれば、原審は判決宣告期日と指定された昭和三〇年七月一五日の差戻後第八回公判期日において、本件被告人六名の弁護人にして被告人実藤市蔵、同高三潴新、同大石豊二の主任弁護人高木巖出席の上、爾余の被告人三名の主任弁護人副島次郎不出頭の侭弁論を再開して、被告人実藤市蔵、同高三潴新、同大石豊二に質問した上検察官、弁護人の意見、被告人等の最終陳述を聞いて結審し、直ちに判決の宣告をなし、しかも右被告人三名の陳述を断罪の資料に供していることはまことに所論のとおりである。けれども、記録によれば右被告人三名に対する質問は同被告人等のみの訴因に関するもので、その陳述も亦同被告人等関係の原判示事実認定の証拠に用いられているに過ぎずして、被告人富安重行、同首藤謙、同富安靖雄の訴因については何等の関係もないから同被告人等のためあらためて弁護権を行使する余地は全くないものと謂うべく、従つて原審の右措置は毫も主任弁護人副島次郎の右被告人三名に対する弁護権の行使を制限した違法は存しない。尤も、同弁護人は被告人実藤市蔵、同高三潴新、同大石豊二の弁護人でもあるけれども、記録によれば同弁護人は右第八回公判期日の通知を受け乍ら、正当の事由なくして出席しないで自ら該期日を懈怠したものであり、且つ同公判期日における右被告人三名の陳述は差戻後第一回公判期日における同被告人等の冒頭陳述と同趣旨のものであり、しかも右被告人三名の主任弁護人高木巖が出席して被告人に質問し、検察官、弁護人の最終意見、被告人等の最終陳述もすべて従前のそれと全く同一にして何等附加された点がないのみならず、弁護人副島次郎欠席の侭再開して審理判決することにつき、右主任弁護人及び被告人等において異議を述べ審理の続行を求めた形跡は存しないから、原審の右措置は副島弁護人の右被告人三名に対する弁護権の行使を不法に制限したものとも謂い難く、右手続に所論の如き訴訟手続の法令違反は存しない、論旨は理由がない。

同控訴趣意第二点(一)、弁護人B、同C、同Dの控訴趣意第一点(二)について、

原判決が所論の如き各被告人の司法警察員に対する供述調書を原判示事実認定の証拠に供していることは所論のとおりである。けれども記録によれば、差戻前原審第七回公判期日において被告人実藤市蔵、同高三潴新、同大石豊二及び同被告人等の主任弁護人たる高木弁護人は同被告人等の司法警察員に対する各供述調書を同被告人等関係につき証拠とすることに同意し、又被告人富安重行、同首藤謙、同富安靖雄及び同被告人等の主任弁護人たる副島弁護人は同被告人等の司法警察員に対する各供述調書を同被告人等関係につき証拠とすることに同意したのに拘らず、差戻後原審第三回公判期日に至り両弁護人及び被告人等が右各供述調書をすべて証拠とすることに同意しないと陳述しているけれども、苟も一旦証拠とすることに同意した以上、その後の公判手続においてたとえそれが差戻後においてであつてもその取消は訴訟手続の確実性の観点から許されないものと解すべきであるから、弁護人等の右不同意は前記各供述調書の有する証拠能力を左右するに由なく、従つて原審は右各供述調書(但し後記実藤市蔵の調書を除く)を刑事訴訟法第三二六条該当書面として原判示事実認定の証拠に供していることが明らかであり、原判決に所論の如き採証法則の違背は存しない。只原判決が原判示第一、二の事実認定の証拠としている被告人実藤市蔵の司法警察員に対する第一回供述調書は被告人富安重行、同首藤謙、同富安靖雄において証拠とすることに同意したものではないから、同被告人等関係の右事実認定の証拠となし得ないのに拘らず、これをその証拠に供したのは採証の法則を誤つた違法あるものと謂わねばならない。けれども、該調書の内容は右事実認定の証拠に掲げられている被告人実藤市蔵の検察官に対する供述調書の内容と同一であり、右違法な証拠を除外しても原判示事実の認定に毫も影響を及ぼすものでないから、前記違法は未だ以て原判決破棄の理由とはなし難い。論旨はいずれも理由がない。

(裁判長裁判官 西岡稔 裁判官 後藤師郎 裁判官 中村荘十郎)

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